去る11月8日に皇居宝伝「松の間」において、皇嗣となられた秋篠宮様と皇嗣妃紀子様が両陛下に皇嗣ご夫妻として初めてお目見えする、「朝見の儀」が行われました。
報道番組において、この模様が放送されましたので、すでにご存知の方も多いと思います。
これにより、国内外に秋篠宮様が皇位継承順位第一位の皇嗣であることを明らかにする「皇嗣宣明の儀」とその関連儀式が滞りなく執り行われたことをお喜びいたします。
現在、国難ともいうべき厳しいコロナ禍の最中にあって、久しぶりに聞く嬉しいニュースでありました。
さて、この一連の儀式の中で、特に注目されたのが、秋篠宮様が皇嗣の証として天皇陛下より下賜されたという「壺切の御剣」(つぼきりのぎょけん:つぼきりのみつるぎ)の存在です。
近影での写真資料がなくその詳細は詳らかではありませんが、京都大学貴重資料アーカイブにこの「壺切の御剣」の絵図が残されておりましたので、下図をご覧ください。
平安時代より、公的な場面着用された貴族の装束は「束帯」と呼ばれ、文官、武官、あるいは位によってさまざまな差異があり、ファッションという側面以上に身分を表す目印としての役割がありました。
秋篠宮様がお召しになられた袍は黄丹袍(おうにのほう)と呼ばれる特別な色の袍で、皇太子や皇嗣、皇太孫(天皇の孫)など、皇位を継承される皇族にのみ着用が許された特別な色の袍であるそうです。
この束帯をお召しになられ、壺切御剣を佩いた御姿が皇嗣の正装束ということになるのでしょう。
実は、現在この絵図の御剣と非常によく似た飾太刀(かざたち)を当社が所蔵しております。今回急遽写真をご用意いたしました。
絵図では金具の文様が半分のみ描かれています。余りに濃密な文様であるためか、省略された部分(白い部分)が多いものと思われます。
当社の飾太刀(かざたち)は江戸時代初期の製作になる貴重な作品です。秘密のベールに包まれた「壺切の御剣」の実像に近い出来口であることが絵図との比較からもお判りいただけると思います。
このような歴史的な遺物を直接目にする機会は我々でも多くはありません。江戸初期といえば今から400年ほど前、いったいどのような方がご所蔵であったのか。静かに佇む御剣のみが真実を知る・・・・歴史ロマンに想いを馳せたいと思います。
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